ほとんどのスポーツで膝は、最も重要な関節であると思います。ケガをして痛めたり、ケガをしなくても酷使して痛んでくることがよくあります。今回は、膝の慢性的な痛みについて考えてみます。
1.ジャンプ膝(膝蓋靱帯炎)
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いわゆるジャンプ膝といわれるもので、ジャンプを多用するスポーツに多く見られます。成長期におこるものは、オスグッド病(No5膝の骨端症へ)と言います。(図1ー@)症状はスポーツ中や、スポーツ後にお皿の下にある膝蓋靱帯が痛くなります。ひどくなると階段を下りるだけでも痛みを訴えます。 これらは使いすぎ症候群なので、練習量をコントロールすることが大事ですが、十分な大腿筋のストレッチや、大腿の後ろの筋力強化(No5レッグカール)がなされていないと、起こりやすくなります。
2.ランナー膝(腸脛靱帯炎)
長距離ランナーに起こることが多いですが、スポーツをしていない人にも見られます。これは、大腿の外側を走っている腸脛靱帯が、膝の外側にある大腿骨のでっぱりに大腿の外側を走る靱帯(腸脛靱帯)がこすれて痛みが起こる病気です。(図2)原因のほとんどがウォーミングアップとストレッチの不足です。運動前のストレッチに腸脛靱帯のストレッチを必ず入れてください(図3)。 痛みが慢性化したときは、局所注射などを行うことがあります。
図1 膝に起こる病気 図2 腸脛靱帯のストレッチ
3.膝蓋骨軟化症(皿の脱臼)
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15歳から20代の女性で、生まれつき全身の関節が柔らかい人(図4)に起こる病気です。
膝のお皿が痛むだけの軽症ものから、お皿が脱臼してしまう重症のものまであります。
症状は、膝の曲げ伸ばしで突然お皿に激痛が走ったり、いやな痛み、脱臼感などを訴えます。膝を伸ばした状態で、お皿を外側に押すとものすごくいやな感じがするのが特徴です。(図3) 原因は生まれつきの関節の柔らかさ(図4)、お皿の骨の形、膝のX脚などによるものが多く、治療は難しいのですが、軽症であれば、4頭筋訓練・テーピング・装具療法が有効ですので医師に相談してください。重症例では手術を行うことがあります。
図3 お皿を外に押してやるとものすごくいやな感じがする | 図4 関節の柔らかさのテスト 柔らかい人 は注意が必要 |
4.棚(タナ)障害
ひざを曲げたときお皿の周りに痛みが生じ乾いた音がするときもあります。一度なるとしばらくは曲げる度にコキコキした感じで痛みが出現します。音がするが、痛みがないときもあります。これは、お皿の周りで関節の袋(これを棚と言います)がお皿の骨と大腿骨の間に挟まってしまうことによります。 多少痛くても我慢できれば、運動を続けさせますが、痛みのために運動ができないようであれば、棚を切除します。
骨と骨の間で挟まる
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5.半月板損傷
膝の関節(大腿骨と下腿骨の間)には半月板という三日月の形をした軟骨の板があります。(図6)内側にある内側半月板と外側にある内側半月板があります。膝をひねることで、半月板を痛めます。スポーツで痛めるときは、内側半月板の方が多いようですが、生まれつき半月板が大きく痛めやすい人があり、この時は外側の半月板を痛めます。小学生ぐらいで、よくスポーツをする子が大きなケガをしなくてもひざが曲がらなくなる伸びなくなるなどと訴えます。 以下の症状がある時半月板の損傷を疑います。
1.膝の曲げ伸ばし時に痛みを訴えたり、ひざが曲がらなくなる、 伸びなくなる(ロッキング)
2.膝を動かすと痛みを伴う音がする(クリック)。
3.何でもない時に急に膝に力が入らなくなりひざをついてしまう(膝くずれ)などを訴える。
4.膝に水がたまる(腫れてくる)
半月板はレントゲンなどに映らないので診断に難渋することがあり筆者は、積極的に関節鏡(膝の内視鏡)を勧めます。治療もほとんど内視鏡で行うことができます。
6.膝の靱帯損傷(慢性期)
靱帯が伸びてしまったまま治癒した状態で、昔ひどく膝をひねったことがある人に起こります。 スポーツでは膝の内側に靱帯を痛めることが多いようで、スキーなどでは、膝を外に開いたまま転んで内側の靱帯を痛めることが多いので、"スキー膝"と呼ぶこともあります。痛めた直後は痛みが強く、固定・安静が原則ですが、治療を間違えると慢性化し、膝の不安定感がでたり、半月板を痛めたり、いろいろな症状がでます。特に以前に関節に血が貯まったことがある人は、前十字靱帯(図7-1)を痛めた可能性が強く、しっかり診断をつけて治療計画を立てなければなりません。
7.肉離れ
膝周囲の肉離れは、スポーツ外傷の中でも頻度が多いもので、多くは関節の近くで筋肉が切れます。中でも膝の裏の内側と外側にあるすじ(膝を曲げる筋肉の腱)は痛めやすく同じ筋肉の骨盤側で切れることもあります。ふくらはぎの内側の筋肉も痛めやすいところです。 肉離れはほとんどがウォーミングアップとストレッチの不足なので、十分に行うくせを付けてほしいです。また疲労しているときは筋肉が通常よりも切れやすい状態になるという実験も報告されています。(No13肉離れを起こした後のプロトコールへ)
8.膝のテーピングについて 靱帯損傷や膝蓋骨軟化症などはテーピングが有効なことがありますが、病気によって巻き方が大きく違うので、専門的な知識と経験が必要です。指導者などや生涯スポーツをする人は覚えておいて良いと思います。
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