なぜ私は触れられることが怖い?
No16:「なぜ、私は新卒で就職したIT企業を1年半で飛び出して、島根県・海士町に移住したのか?!」秋元悠史さん-エッセイ集 フロンティア・フォーラム
「なぜ、私は新卒で就職したIT企業を1年半で飛び出して、島根県・海士町に移住したのか?!」
秋元悠史
海士町・島前高校魅力化プロジェクト及び
隠岐國学習センター スタッフ
島根県海士町に移住して丸1年
本土からフェリーで北上すること3時間。そこに、隠岐諸島に浮かぶ人口2400人足らずの島・海士町があります。地域唯一の高校・島根県立隠岐島前高等学校を魅力的な教育環境とすべくスタートした「島前高校魅力化プロジェクト」、そして海士町の公設塾「隠岐國学習センター」のスタッフとしてこの地に移り住み、2年目に突入しました。現在は高校生向けの学習指導や諸々の事務に携わっています。
海士町に来てから実感したことは、次の二つです。
・「やりたいこと」より「やるべきこと」
・リスクは把握すれば怖くない
「やるべきこと」を見出せた!
移住を決めた背景には「島の課題を解決し、自分の成長につなげたい」という意気込みがありました。しかし、その勢いはあっさり挫かれました。目の前の課題は、(当然ですが)本で読んだことや当初の想定ほどシンプルではなかったからです。「やりたかったこと」が嘘みたいにチンケに思えました。
手応えを感じられるようになったのは、ようやく1年が経とうとした頃でした。刻一刻と状況が移り変わり、かつ人手は足りない中で、求められる役割は日々変化します。スキルもなく、「やりたいこと」も見失った僕は、舞い込む仕事一つ一つを何とかこなすことで精一杯でした。ところが、求められる日々の仕事を通じて、様々な角度から島の子どもが抱える課題に触れるようになり、結果的に「やるべきこと」が見えるようになりました。今は、自分の仕事の延長線上に「やるべきこと」を見出したことで、これまで以上の充実感の中で働いています。
ときに行われません排卵まずは"現場"に行くことが重要
振り返ると、中途半端な知識やスキルがないことが「運の始まり」でした。「できること」に縛られると「やりたいこと」にこだわってしまい、「やるべきこと」からずれたことをしでかしていたかもしれません。「成功体験に頼るな」「0から考えろ」とよく言いますが、地道に目の前の仕事を積み重ねて漸く「やるべきこと」を見出したことで、その意味を実感した次第です。
机上の学びもまた必要ですが、本質は現場にあります。「やりたいこと」が現場で求められる「やるべきこと」とは限らないという事実、そして現場の課題に直に触れることの重要性は、東京を離れ、海士町という現場に出なければ実感できなかったでしょう。最近は「社会貢献したい」という人が増えていますが、まずは現場に行ってみるべきです。「やりたいこと」と「やるべきこと」のギャップを見つけたら、そこからが勝負だと思います。
収入は半分でも、それを補って余りある経験がここにある
海士町への移住が決まった後、いろんな人から「よく決断したね!」と言われるようになったことをよく覚えています。正直なところ、僕自身はそこまで重大な選択をしたとは思っていません。
移住を決めたのは、中学生の頃から抱き続けた教育に対する想いがあったからでした。「地元・秋田の教育をなんとかしたい」。漠然とした問題意識を持っていた僕は、学生時代に一度訪れその魅力に感銘を受けた、地域活性化の最先端の地・海士町の教育事業で求人があることをTwitterで知り、新卒で就職した都内のIT企業を1年半で飛び出しました。
収入は約半分。地元との距離はますます遠くなり、本土へ渡る手段はフェリーのみ。業務内容も前職とは畑違い。自分を磨き、人とのつながりを拡げ、興味を深めるのに適した東京を離れるのは、はっきりいってリスクでした。
しかし、僕は移住して正解でした。東京にいた頃と比べれば確かにデメリットもありますが、それを補って余りある経験を海士町で味わえています。
リスクを把握できれば、不安はコントロールできるもの
なぜ移住を決断できたのか。その鍵は、リスクを把握したことにありました。学生時代に海士町を一度訪れていたことがリスクの理解と決断を後押ししました。リスクが分かれば、不安はコントロールできます。失うものが何かわかってはじめて、それらと得られるものとを天秤にかけて判断できるのです。
闇雲にレールから外れることを勧める気はないですが、求めるものがあるなら、今の状況を飛び出すのも選択肢の一つとなります。リスクは、把握できればそう怖いものではありません。不安なら、「体験」から入るという手もあります。即海外移住ではなく、まずは旅行から、というふうに。
終わりに
「秋田をもっと元気にしたい」という想いの果てに、気がつけば僕は海士町にたどり着いていました。東京を離れたことで、転職市場に依存しない、他の誰とも違う自分だけのキャリアを築くことができています。
移住後、とある人から「その幸運は、偶然ではないんです!」という本をご紹介頂きました。本書の肝である「プランドハプンスタンス理論」は、僕自身のキャリアと重なる部分も多く、思わず感心してしまったことを覚えています。「自分が何を求めているか」という問いの先に「不安」が障害として立ちはだかっているなら、この本が後押ししてくれるかもしれません。
秋元悠史
1986年秋田県旧神岡町生まれ。大学卒業後、都内のソフトウェアベンダーに就職。秋田大好き。地元に錦を飾るべく、修行のために2010年10月末に海士町へ移住。在京中は秋田を盛り上げるWE LOVE AKITAで活動。
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