甘いガムは感傷的ですか?
見えない道場本舗
ファイターズ・ブリュージムのバレンタイン
その日、東京郊外の雑居ビルの一角にあるキック・総合格闘技ジム「ファイターズ・ブリュ―」の練習には、奇妙な緊張感が漂っていた。
試合が近い人も、減量に入ろうかという人も、それなりにいないわけではないが・・・、そういった意味での緊張感ではない。
この日は2月14日だったのだ。
硬派で古風な道場的ジムだと、そんなことを気にするのもはばかられる雰囲気もあるかもしれない。
だが、このジムはその反対、練習の厳しさとはまた別の、お気楽で家族的な雰囲気がある。所属プロ選手にしてBJJの指導者、田宮は、意中の女子選手と廻が親しく会話していたら「お前なんか一生白帯のままにしてやる!」と口走ったり、その田宮を含めたジムの先輩たちは、廻と同い年の北村勇大が後輩の柔道部の女子・愛川桃子に慕われている(?)ことが分かると、ほほえましく見守るどころか「なんでアイツが」「メガネが萌えポイントなのか?」…と、ブツブツ暗い情念を燃やすほどなのだ。
しかし、さすがに2月14日を意識はしていても、その話題や行事はおそらく練習後。
練習時間はみな集中して、それぞれのトレーニングに一生懸命だ。
・・・その一角に、特に一生懸命なところがあった。
「なんど言ったら分かるんだよ!!相手の首は"ひっかける"んだよ!」
「回すタイミングがずれている!!」
「・・・マキちゃん、ちょ、ちょっとタンマ。ちょっと息を整えるから…」
nは何を行います。「甘い!!敵は待っててくれないぞ!!」
首相撲の練習をする神谷真希と、高柳廻である。
指導する古屋健一郎と、絹川まりあが「?」という表情を浮かべながら、練習を遠くから観察する。
「おいおい、えらく気合が入ってるなマキのやつ。また試合があるんだっけ?」
「今のところは特に無いはずだけど・・・」
「それに、今日は廻のメニューって、柔術のほうじゃなかったか」
「ええ、でもメグル君と田宮さんが練習しようとしてたら、凄い迫力で『お前に首相撲の特訓をしてやる!!』って」
「ほんと、マキの奴は何があったんだ!?鬼気迫るものがあったぞ」
指導対象を奪われた当人、柔術家の田宮が話に入ってきた。
「だいたい、その首相撲の練習だが…、あんな一方的にやられるだけでいいのか?」
「ん?たしかにメグル、今日はやられっぱなしだな。最近はコツも分かってきて、体力の差も生かしてマキとは互角になりつつあったはずだが…」
古屋が首をかしげると、打撃の専門家のまりあが喝破する。
「あれは、精神力と集中力ね。メグル君に絶対に負けない、という意識でやってるから、普段の練習以上の力が出ているのよ。あなどれないわね…」
「おいおい、『首相撲で事故』とでもなったら洒落にならんぞ。ほどほどにするよう・・・田宮から、マキに言ってやれよ」
「なんで俺が! い、今はちょっとあの子に近づくのは…。メグルには尊い犠牲になってもらいましょう。いつものように」
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「というか、なんでまたそんな思いっきりのリンチ…いや練習をマキが廻にしてるんだ?また何かあったのか?……というか、まりあが何を焚きつけたのか…」
「アタシをなんだと思ってるのよ。まあ、おおよその見当はつくけど…」
「???」
どうも絹川まりあと、他の指導者の会話は微妙にかみあわなかった。
◇ ◇ ◇
練習終了後。
メグルは通常の3倍状態でぼろぞーきんになって倒れている。
そのメグルにも、原因を作った鬼気迫るマキにも、眼を合わせようとするジム生はいなかった。
一通り、クールダウンも終えたあとで・・・。
「みなさーん、今日はバレンタインデーなので、わたしからチョコを贈りまーす。あ、でも減量始める人はガムで我慢してね」
ごく小さい、儀礼的なものではあったが、やはりプロ選手をはじめ皆の顔がほころぶ。
素直な廻は「うれしいっス、ありがとうございます」とストレートに喜ぶ。
シャイな勇大は「・・・ども」と、わざとぶっきらぼうに、関心のなさそうに振舞う。
なぜか桃子も貰う側になって「おうっ おうっ」と一番よろこんでがっついている(笑)
そんな中で、背後からマキに「メグルッツ!!」と怒鳴られた…いや声をかけられた廻は、条件反射的にびくっと怯えながら振り向いた。
マキ「今日の、練習なんだけどな・・・」
廻「は、はい、本日は有難うございました…わたしめに何か、至らぬ点などありましたでしょうか」
どのように我々は、彼らがIDをワーキングペーパー80を望むものを知ることができるなんか、練習がトラウマになっているらしく、敬語になっている(笑)。
「お前の弱点は、フィジカルだ!!」
びしっ、と指を指すマキ。
「・・・5巻の48、49ページでマキちゃん、『力で引きつけるのはNG』『力で引こうとすると、結局パワーのある奴には負ける』って言ってなかった?」
「う、うるさい!!」→(前蹴り)
うずくまる廻を前に、なおも言葉を続ける。
「技は力のうちにあり、ってオーヤマ先生も言ってたろ?筋肉と、パワーが足りないんだよお前には!………………だから、これだ!!」
袋を、とんと置いた。
「あたしも使ってるプロティンだ、飲め。今飲め。トレーニング直後が一番効果的なんだ」
「うーん、でもプロティンなら自分も使ってるのが・・・(チラッ)・・・はい、いただきます」
相手の前蹴りの予備動作を見て、すぐさま廻は態度を変えた。
そして牛乳と一緒に、口に入れた。
そして、廻は何の気なしにひとり言を言う。別に大声ではなかったが、ジムのどこからでも、その声ははっきりと聞こえた。
「あ、これ結構おいしいや。チョコ味で」
ジムにいた人は、その能天気な発言の意味するところを瞬時に理解し、一斉に廻と真希に注目が集まった。
無骨者のナベさんも、勇大もちょっと驚いた表情。田宮は露骨に羨望の表情。絹川まりあに至っては、悪魔的な笑みを浮かべている(笑)。
意味が分からないのは「おうっ」と自分と、余ったチョコを口に入れるのに集中している桃子と、一方の当事者のメグル君だけだった。
「あ…あ……」
こっそり、秘密のつもりの行動が大バレにばれたことが分かり、この上無く赤面するマキ。
「ありがとう、これいいね!」
とまったく自分だけ理解せず満面の笑みのメグル。
この0.03秒後、廻にハイキックが炸裂、彼は意識を失ったが、ジムで彼に同情するものは誰もいなかった・・・という。
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