双子小説特集 / Pulp Literature
Last Updated: 2011.6.11 (Sat)
小林恭二『ゼウスガーデン衰亡史』(1987)(鮮烈度 ★★★★) を追加。
このコンテンツについて
双子が登場する文学作品を集めています。フィクション世界では何かと個性的な扱いを受ける双子。入れ替わりトリックに使われたり、猟奇的な雰囲気を演出したり、その用途は様々です。このコンテンツでは、そんな神秘な双子にスポットを当ててみることにしました。全国に点在する双子文学ファンのお役に立てれば幸いです。
説明文の末尾にある★は鮮烈度を表します。双子のインパクトが強ければ強いほど評点は高くなります(五つ星が最大)。作品の評価を表しているわけではないので注意。
双子文学に関する情報は、メールフォームまでお気軽にお寄せ下さい。
それがオフになった場合指の爪が生えます。作品リスト(鮮烈度別/作者名順)
★★★★★
- 江戸川乱歩「双生児」(1924)【Amazon】
- 強盗殺人で死刑判決を受けた男(双子の弟)の告白。双子の近親憎悪を題材としている。その憎悪の強さたるや、「ほかになんの理由がなくても、ただ同じ顔をした肉親であるということだけで、充分殺してしまいたくなるほど」(p.15)。男は兄を殺害したあと、そのまま彼になりすまして悪事をはたらく。(鮮烈度 ★★★★★)[主役] [ミステリ]
- アゴタ・クリストフ『悪童日記』(1986)【Amazon】
- 「大きな町」から疎開してきた双子の幼い兄弟。彼らは「魔女」と呼ばれる祖母の家に預けられ、生き抜くために労働と訓練に励む。「体の鍛錬」と称してお互いの体を叩いたり、「精神の鍛錬」と称してお互いを罵ったり。さらには他人を脅迫し、殺人にまで手を染める。(鮮烈度 ★★★★★)[主役]
- エドワード・ケアリー『アルヴァとイルヴァ』(2003)【Amazon】
- アルヴァとイルヴァは双子の姉妹。自分たちのことを一心同体だと信じていて、離ればなれになったら死ぬと思っている。(鮮烈度 ★★★★★)[主役]
- 吉行理恵「桃花の蕾」(1984)【Amazon】
- 30代の邪悪な双子姉妹(康子&妹)。康子は専業主婦で、夫・松宮はエリートサラリーマン。夫婦には2人の子供がおり、家には康子の妹(独身・会社員)も同居している。「一卵性の双子でもちょっとしたところで見分けられるものなのに、康子たちはあまりによく似ているので、家の中で康子はピンク、妹は黄色を身に着けることにしたが、双子が洋服を替えても誰も気付かなかった。ときどき康子は妹が勤める会社に出掛け、妹は松宮と同衾した。その遊びは康子が身籠もる迄続いた。」(p.169) 姉妹は意地悪で傍若無人。世間体を守りつつ、いじめやいたずらなど性格の悪さを発揮している。(鮮烈度 ★★★★★)[主役]
- 吉行理恵「赤い庭」(1985)【Amazon】
- 「桃花の蕾」の続編。30代の邪悪な双子姉妹(康子&伸代)。2人について、母親は次のように述べている。「康子と伸代に太刀打ちできる女はいないわ。賢ければ、初めから近付かないし、うっかり捕ったら利用されたり見下げられたり、ろくなことがないから這う這うの態で目の届かない所へ隠れるしかないわよ」(p.188) 2人の邪悪さはますます磨きがかかっていて、本作では資産家の嫁を自殺(縊死)に追い込んでその後釜に座っている。「首吊りをすると必ずウンコが出るのですって」双子は愉しそうに噂した。(p.193) 他にも嫌がらせや策略がてんこ盛りなので、これから読む人は覚悟されたい。(鮮烈度 ★★★★★)[主役]
★★★★
- 岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」(1999)【Amazon】
- 16歳のときに遊郭へ売られた女郎に双子の姉妹。間引き屋の母は生まれたばかりの姉妹の片方を……。(鮮烈度 ★★★★)[主役] [ホラー]
- 海野十三「三人の双生児」(1935)【Amazon】
- ※ネタバレ注意! 二卵性双生児+シャム双子(珠枝&真一+真二)。珠枝と真一は卵子は同じでも精子が違っており、真一は近親相姦で生まれた子だった。真一には首が2つ(もう片方は「真二」と名付けられる)あったため、世間体を考えてしばらくは座敷牢に閉じこめられることに。その後、真二は切除され、真一の身柄は見世物小屋にわたる。(鮮烈度 ★★★★)[主役] [ミステリ]
- 江國香織『なつのひかり』(1995)【Amazon】
- 姿格好がまったく同じで、挨拶をされても返事をしない、無愛想な10歳くらいの双子の姉妹が登場。マンションの非常階段をたまり場とし、顔を見合わせてくすくす笑いをしている。(鮮烈度 ★★★★)
- 小林恭二『ゼウスガーデン衰亡史』(1987)【Amazon】
- 双子の兄弟・宙一&宙二は、のちに日本を席巻することになる遊戯場の創業者。小さい頃は両親でさえ見分けがつかないほどそっくりだったものの、高校に入ってからは一転して異なる性格・風合いを見せるようになる。夢想家の宙一と実務家の宙二は、お互いの長所を生かして事業を成功させるのだった。ところが、しばらくして2人は何の前触れもなく完全な同一人物と化してしまう。その精度は、「同じそぶりで同じ大きさかつ同じ色合いのペニスをしっかと握りしめてマスターベーションをはじめ、その結果厳密に同タイムで同量の精子を射精する」ほど。現代の奇蹟として医者を驚かせることになる。(鮮烈度 ★★★★)
- アンジェラ・カーター『ワイズ・チルドレン』(1991)【Amazon】
- 75歳の双子の姉妹(ドーラ&ノーラ)。俳優(双子)の私生児として生まれ、ショウビジネスの世界で活躍してきた。「ただし、一卵性双生児ではあっても、左右対称だったことはただの一度もない。人間の体だって左右対称ではないでしょう。足だってかならずどちらかの足のほうが大きいし、耳垢もたくさん出る耳は、左から右のどっちか一方。ノーラのウンチは下痢っぽいけど、私は便秘症。ノーラは財布の紐のほうもゆるくて、男どもにどんどんみつぐタイプ、哀れなタイプの女だけど、私はケチケチと貯めこんできた。メンスのときも妹は困るほど量が多く、私はほんのもうしわけ程度。彼女は『そうね!』といい、私は『かもね……』といいながら生きてきた。」(p.私の夫はアルコール依存症であればどのように私は知っている11) 一族は双子遺伝子が強いようで、作中には合わせて5組の双子が登場する。(鮮烈度 ★★★★)[主役]
- 村上春樹『1973年のピンボール』(1980)【Amazon】
- 目が覚めたら「僕」の両脇に双子の姉妹が寝ていた。(鮮烈度 ★★★★)
★★★
- 赤川次郎『アンダースタディ』(1993)【Amazon】
- 両親の離婚で3歳のときに生き別れた双子姉妹(添田美幸&内海奈美)が、父の死をきっかけに18年ぶりに再会する。妹が平凡なOLをしていたのに対し、姉は裕福な生活を送っていた。2人は顔が瓜二つだったため、妹が姉の代役を引き受け男とデートする。「姉は寒がり。私は暑がり。双子でも、違うところはあるものなのだ。」 バブル臭ただよう勘違い系の双子小説。(鮮烈度 ★★★)[主役]
- ジョン・アップダイク「双子姉妹」(1987)【Amazon】
- プリシラ&スーザン。2人は両親によって別々の育ち方をするよう教育されていた。「家庭内では、プリシラが『芸術家』肌、スーザンが『実務家』または『科学者』肌という神話が出来上がっていたけれども、二人にしてみればおたがいの興味や姿勢はほとんど同一なのだ。子供の頃罹った水疱瘡やおたふく風邪も同時なら、夏に別々の林間学校や臨海学校に送られても、九月になって話し合うと、たまたま全く同じ試練に遭い、全く同じことを初体験しているのである。全然別の遠く離れた湖で全く同じ週に泳げるようになり、全然別の森とはいえ、最初のペッティング経験は森の中だった。」(p.155) 主人公ハンクはプリシラと懇意になるも、スーザンと出会ってからは彼女に惹かれるようになる。「彼女(引用者註: プリシラのこと)が双子の片割れであるという事実は、プリシラの姿に後光の輝きを添える。それはつまり、どこかにこの現実、この肉体の隠れた分身が存在するという奇妙にプラトニックなヒントでもあり、二重像の仄かに滲んだ光でもあった」(p.158) (鮮烈度 ★★★)
- 伊藤たかみ『ミカ!』(1999)【Amazon】
- 大阪に住む小学6年生の男女(ユウスケ&ミカ)。ミカは男勝りで喧嘩が強い。性的に分化する時期にさしかかるも、女になるのを頑なに拒んでいる。「なんでアタシ女なん? 女になんてなりたなかったわ。イヤやイヤや、もーイヤや。女はイヤ、男になりたい! 生理とかおっぱいとか、全部イヤや。ユウスケがつけたらええねん」(p.179) 双子小説としてのインパクトはともかく、児童文学としては傑作なので一読をお勧めする。(鮮烈度 ★★★)[主役] [児童文学]
- 伊藤たかみ『ミカ×ミカ!』(2003)【Amazon】
- 『ミカ!』【Amazon】の続編。ユウスケとミカは中学2年生になっている。相も変わらずオトコオンナぶりを発揮するミカは、制服以外ではスカートをはかない。しかし、クラスメートの男子を好きになることで否応なく変貌する。ユウスケは喪失感を味わうことに。(鮮烈度 ★★★)[主役] [児童文学]
- 恩田陸『球形の季節』(1994)【Amazon】
- 双子の男子高校生(忠彦&考彦)が登場。両親の離婚で離ればなれになった彼らは、同じ市内の別々の学校に通っている。「潮見忠彦と孝彦は、本当に瓜二つだった。中肉中背、サッパリと切った黒髪、キリッとした眉に利発そうな瞳。「日本の少年」というタイトルをつけて総務省のポスターにでも起用したいような、爽やかで「正統な」感じのする少年二人であった。質問をしてもハキハキとして、片方がしゃべれば同じ声があとを続ける。息の合った――というよりも一つのものを二つに分けたような二人が、互いの顔をチラリチラリと見ながら話し続ける。」(p.177) (鮮烈度 ★★★)
- 角野栄子『アイとサムの街』(1989)【Amazon】
- 12歳の双子の姉妹(アイ&ミイ)。アイは活発で男の子っぽい。穴の空いたジーンズをはき、オリジナルの自転車「ねこちゃん」を開発している。ミイはお洒落で女の子っぽい。髪の毛にリボンを結い、ふりふりのスカートをはいている。「ほんとにまあ、あんたたちみてると、どうしてこうちがうんだろ。神さまもずいぶん手間ひまけたもんだわねえ。せっかくふたごなんだから、同じような女の子ふたりつくっとけば楽でいいのに」(p.なぜ過去はまだ傷つけるん。10) 2人はハイテク少年サムと出会い、街で見つけたある謎を追いかける。(鮮烈度 ★★★)[主役] [児童文学]
- ガブリエル・ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』(1981)【Amazon】
- 復讐を誓った双子の兄弟(パブロ&ペドロ)が、ターゲットをブッチャーナイフで滅多刺しにする。(鮮烈度 ★★★)
- パノス・カルネジス「石の葬式」(2002)【Amazon】
- 双子の姉妹が実の父から虐待されて育つ。18年間首輪をつけて地下室で監禁されるも、隙を見て脱走する。(鮮烈度 ★★★)[主役]
- 川端康成『古都』(1962)【Amazon】
- 生き別れの双子の姉妹(千重子&苗子)が再会。千重子に想いを寄せていた男が苗子に結婚を申し込むという双子小説ならではの逆転劇が見られる。さらに姉妹は同衾を果たすのだった。(鮮烈度 ★★★)[主役]
- エラリー・クイーン『シャム双子の謎』(1933)【Amazon】
- 陽気なシャム双子の少年たち(フランシス&ジュリアン)。2人は母親に連れられ、山奥にある医者の家に匿われていた。ところが、滞在中に殺人事件が発生、彼らはその被疑者になる。(鮮烈度 ★★★)[ミステリ]
- エーリヒ・ケストナー『ふたりのロッテ』(1949)【Amazon】
- 両親の離婚で幼い頃に生き別れた双子姉妹(ルイーゼ&ロッテ)が、夏の林間学校で偶然再会する。2人はお互いの存在を知らずに育っていた。邂逅を果たした姉妹は両親を復縁させるべく、密かに入れ替わって帰宅の途につく。ルイーゼは活発な巻き毛、ロッテはおとなしいお下げ。入れ替わっても誰も気づかない。(鮮烈度 ★★★)[主役] [児童文学]
- ジョルジュ・サンド『愛の妖精』(1849)【Amazon】
- 裕福な農家に双子の兄弟(シルヴィネ&ランドリ)が生まれる。2人は愛情が強く、離ればなれになることを嫌っている。しかし14歳になったとき、弟だけ奉公に出されるのだった。弟がたくましく成長するのに対し、兄のほうは弟への嫉妬が高じて病気になる。(鮮烈度 ★★★)[主役] [児童文学]
- アンドルー・ショーン・グリア「フリン家の未来」(1997)【Amazon】
- フリン家の4歳の息子が双子(マーキー&ダニー)。マーキーはピンクのシャツ、ダニーは水色のシャツと、2人は色で分けられている。また、彼らは秘密の言葉で喋っている。「ババビドリノオトコノコババユウレイビビイエデイデババビユウレイガガダダクサンババイデ……」(p.278) (鮮烈度 ★★★)
- アレックス・シアラー『海のはてまで連れてって』(2003)【Amazon】
- 双子の兄弟(「ぼく」&クライヴ)が、父が働く豪華客船に忍び込む。「ぼく」は徹底的にクライヴをバカにしており、将来は刑務所で暮らすだろうと予想している。確かにクライヴは普通ではない。ドン・キホーテよりややマシな程度の、痛烈なボケを連発している。(鮮烈度 ★★★)[主役] [ヤングアダルト]
- 白石公子『僕の双子の妹たち』(2004)【Amazon】
- 「僕」の妹が二卵性の双子(実のり&穂のか)。実のりはO型の大学生で、穂のかはA型の専門学校生。「いつになっても、実のりと穂のかの関係は、バランスのとれないやじろべえのようだ。実のりが不安定になると穂のかはしたたかになって冷静になる。実のりがおちつくと穂のかが混乱していく。永遠に終わらないシーソー遊びだ。」(p.196-7) また、実のりは大学の先生と不倫関係にある。(鮮烈度 ★★★)
- ゼイディー・スミス『ホワイト・ティース』(2000)【Amazon】
- ロンドンに移住してきたムスリムの子供が双子(ミラト&マジト)。ミラトは未成年ながらイスラム原理主義グループに入る。マジトは伝統を受け継がせようと故郷に送り返されるも、何の因果かイギリスナイズされて帰ってくる。(鮮烈度 ★★★)
- W・G・ゼーバルト『目眩まし』(1990)【Amazon】
- 少年カフカにそっくりの双子が登場。揃ってくつくつ笑いしている。(鮮烈度 ★★★)
- マーク・トウェイン「まぬけのウィルソン」(1894)【Amazon】
- 欧米を遍歴中のイタリア人兄弟(ルイージ&カペッロ)。2人は貴族の家柄で、ピアノの連弾を得意とする。若いながらも様々な冒険を経てきた。片方は色が黒く、片方は色が白い。また、片方は大酒飲みで、片方はあまり酒を飲まない。2人はアメリカ西部に来て厄介な目に遭う。(鮮烈度 ★★★)
- マーク・トウェイン「かの異形の双生児」(1894)【Amazon】
- 欧米を遍歴中のイタリア人兄弟(ルイージ&カペッロ)。2人は貴族の家柄で、ピアノの連弾を得意とする。ただし、「まぬけのウィルソン」とは違って、こちらは頭が2つ・腕が4本・胴体が1つ・脚が2本のシャム双生児である。イメージとしては、『キン肉マン』に出てくるアシュラマンみたいな感じ。2人はそれぞれ意思を有しているものの、体(両足)の支配権は1週間ごとに交代しているため、特に混乱なく動くことができる。(鮮烈度 ★★★)[主役]
- オルガ・トカルチュク『昼の家、夜の家』(1998)【Amazon】
- ナチスの収容所で人体実験された双子姉妹。体にはいくつも傷痕が残っている。「わたしたち、心もまったくおなじだろうって思われたのよ」(p.323) (鮮烈度 ★★★)
- トマス・トライオン『悪を呼ぶ少年』(1971)【Amazon】
- 双子の少年ナイルズ&ホランド。兄のホランドは邪悪な性格をしており、度の過ぎた奇行で周囲を困惑させている。一方、弟ナイルズは心がやさしく、兄に支配されながらも彼の行為に疑問を抱いていた。双子が住むリンゴ園では、父親の事故死を皮切りに奇妙な事件が続いている。ナイルズはホランドの仕業だと睨むが……。 (鮮烈度 ★★★)
- 野中柊『小春日和』(2001)【Amazon】
- 小学校低学年の双子姉妹(小春&日和)。2人は鏡像双生児で、つむじの向きや耳たぶの大きさ、利き腕のあり方など、身体的特徴が左右逆になっている。外見は瓜二つのうえ、頭のてっぺんから爪先までまったく同じものを身に着けていた。母親曰く、「あんたたち、大きくなればなるほど似てくるわねえ。何だか、こわいくらいだわ」(p.17) 姉妹はタップダンスを習い、ケチャップのCMに出て一躍有名になる。ケチャケチャ。トマトマ。タップタップ。(鮮烈度 ★★★)[主役]
- M・ジョン・ハリスン『ライト』(2002)【Amazon】
- 2400年の宇宙(の一部)を牛耳るクレイ姉妹(イーヴィ&ベラ)。ケバイ格好をしている。(鮮烈度 ★★★)
- ジョン・バンヴィル『バーチウッド』(1973)【Amazon】
- 蒼白な双子の姉妹(エイダ&アイダ)が移動式のサーカスで働いている。メロディに乗って荘重な孔雀の舞を披露。ほか、この小説には双子がもう一組出てくる。詳述は避けるが、そちらのほうが遙かに不気味。(鮮烈度 ★★★)
- ジョン・バンヴィル『海に帰る日』(2005)【Amazon】
- 11歳の双子の姉弟(クロエ&マイルス)。クロエ曰く、2人は「二個の磁石みたいなもの」。しかし、「逆向きになっていて、引き合ったり反発したりする」。クロエは感情を表に出さないタイプ。マイルスは口がきけない。2人は家庭教師をからかったり、通りがかりの少年に因縁をつけたりする。(鮮烈度 ★★★)
- パトリック・マグラア『失われた探検家』(1988-)【Amazon】
- 「串の一突き」に二卵性双生児の男女。事故で死別した彼らが重要な役割を果たす。また、「血と水」に成人した双子の姉妹が登場。2人だけでひそひそ話をしている。(鮮烈度 ★★★)[ホラー]
- 宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』(1993)【Amazon】
- 「気のふれたお神酒どっくり」のような、双子の男子中学生(哲&直)が登場。「ぼくたちは」「双子なんです」といった具合に、一つの文章を分割し、2人で交替しながら話をする。(鮮烈度 ★★★)[主役]
- 皆川博子『死の泉』(1997)【Amazon】
- 第二次大戦下のドイツ。双子の姉妹がナチスによって人体実験の材料にされる。人為的に成長を早められたり、生命を維持するために「接合」されたり……。(鮮烈度 ★★★)
- 横溝正史「双生児は囁く」(1948)【Amazon】
- 「双生児は踊る」の続編。双子のタップダンサー夏彦&冬彦が、ひょんなことから首飾りをめぐる連続殺人事件に関わる。「夏ちゃん、人殺しだ」/「うん、冬ちゃん、人殺しだ」/「たいへんだねえ」/「うん、たいへんだ」/たいへんだ、たいへんだといいながら、双生児はいかにも楽しそうである。まるで甘美なものでも味わうような口ぶりでしきりにさっきから、人殺しだと繰返している。(鮮烈度 ★★★)[主役] [ミステリ]
- 横溝正史「蟹」(1949)【Amazon】
- ネタバレ注意! 元シャム双生児の姉妹(秋子&春子)。腰のところでくっついている双生児蟹娘として苦汁を舐めてきた。日本を脱出し、中国で見世物になった彼女たちは、男に弱みを握られ無体な目に遭う。その後、手術で体を分離してもらうも、今度はその恩を着せられ酷い目に遭うのだった。わたしたちのこれからが、どういうことになるか存じません。しかし、双生児、それも体がくっついた双生児として生れた二人のうち、一人が死んでしまったからは、わたしの生命ももう長いことではないのでしょう。(鮮烈度 ★★★) [ミステリ]
- 横溝正史『八つ墓村』(1951)【Amazon】
- 田治見家を取り仕切る双子の老婆(小梅&小竹)。2人を前にした語り手が、次のように述懐する。「しかし八十を越えて、しかもこんなによく似た双生児というものは珍しいとか異様とかいうよりも、むしろなんだか薄気味悪いのである。先天的な相似はともかく、後天的にできたはずのしわの一筋から、皮膚のシミにいたるまで、そっくり同じで、一方が笑えばもう一方の顔の筋肉も、同じようにほころびるのではないかと思われるほどだった。」(鮮烈度 ★★★) [ミステリ]
- 横山秀夫『影踏み』(2003)【Amazon】
- 真壁修一はプロのノビ師(寝静まった民家に侵入する泥棒)。彼の中耳には、10代の頃に死んだ双子の弟・啓二が住みついている。啓二は実の母親に自宅を放火されて焼死したのだった。修一と啓二は1人の女を取り合ったことがあり、そのことが現在まで尾をひいている。「双子というのものは、互いの影を踏み合うようにして生きているところがある。(……)胸の中は黒々としていた。顔形はおろか、自分と心の有り様まで似通った複製のごとき人間が、この世に存在することを呪った。」(p.148-9) また、作中にはもう1組双子(新一郎&二朗)が出てくる。(鮮烈度 ★★★)[主役]
★★
- ジョン・アーヴィング『熊を放つ』(1968)【Amazon】
- 殺し屋一家に双子(ガヴロ&ルトヴォ)。がっちりした体格だが口はきけない。1個の脳味噌を2人でわけあっている、と評されている。(鮮烈度 ★★)
- ジョン・アーヴィング『また会う日まで』(2005)【Amazon】
- 主人公が通う幼稚園に双子の姉妹(ヘザー&パッツィー)。そっくりの2人は離れたがらない。どちらかが病気になると、もう一方も幼稚園を休む。昼寝をするときはマットを重なり合うように敷いて、一枚の毛布にくるまる。「そうやって一つの子宮に同居した過去を模倣していたのでもあろうか。」(vol.1 p.189) また、同級生に男女の双子(ゴードン&キャロライン)がいる。(鮮烈度 ★★)
- ケイト・アトキンソン『博物館の裏庭で』(1995)【Amazon】
- 語り手の従姉妹が双子(デイジー&ローズ)。2人は「しみひとつないほど清潔」であり、また、「髪の毛一本、爪ひとつにしても区別がつかない」。 (鮮烈度 ★★)
- 綾辻行人『殺人方程式』(1989)【Amazon】
- 若手刑事に双子の兄。(鮮烈度 ★★)[主役] [ミステリ]
- P・G・ウッドハウス『比類なきジーヴス』(1923)【Amazon】
- 語り手の親戚。双子の兄弟にして比類なき問題児である。語り手にタカって遊びまくり、2人して同じ女性を好きになる。度の過ぎた悪戯によって大学を放校された。(鮮烈度 ★★)
- 逢坂剛『百舌の叫ぶ夜』(1986)【Amazon】
- ※ネタバレ注意! 暗殺者に双子の兄弟(新谷和彦&宏美)。兄が依頼の窓口を務め、弟が殺人を実行する。弟は娘として育てられたうえ、殺人嗜好癖があった。子供のころ、実の父親を殺害している。(鮮烈度 ★★) [ミステリ]
- ポール・オースター『幻影の書』(2002)【Amazon】
- 田舎の使用人が双子(ファン&コンチータ)。彼らは「喋れない、不思議な小人たち」(p.232)として、独特の雰囲気を醸し出している。(鮮烈度 ★★)
- フラナリー・オコナー「グリーンリーフ」(1956)【Amazon】
- 使用人の息子が双子(ミスタ・O・T&ミスタ・E・T)。「喧嘩はしない。一人の人に二つ体があるみたいだ。」(p.62) (鮮烈度 ★★)
- グリム兄弟「ふたり兄弟」(1857)【Amazon】
- 主人公が双子。かっとなった弟が兄の首を切り落としている。また、入れ替わりも完備。(鮮烈度 ★★)[主役]
- アンドレイ・クルコフ『大統領の最後の恋』(2005)【Amazon】
- 語り手に双子の弟。精神を病んでいる。さらに、妻が双子を妊娠するが……。(鮮烈度 ★★)[主役]
- 小池真理子『ナルキッソスの鏡』(1993)【Amazon】
- ※ネタバレ注意! バツイチの中年女が、成人した双子の息子たち(球子&富士男)と森の中で暮らしている。女は年に1度、通りすがりのカップルを殺害し、金品を奪って双子へのプレゼントにしていた。特に病弱な球子のことは可愛がっていて、服飾品には気を遣っている。ところが、実際の球子は11歳のとき死亡していた。女は狂気を患っており、マネキンを球子だと思いこんでいる。(鮮烈度 ★★)
- シャン・サ『女帝 わが名は則天武后』(2003)【Amazon】
- 双子の侍女が登場する。(鮮烈度 ★★)
- ミルドレッド・ジョーダン『アーミッシュに生まれてよかった』(1968)【Amazon】
- アーミッシュの農場で暮らす11歳の双子(ケティ&ジェイク)。ジェイクはしきたりで禁止されているラジオや西部劇に興味を持つ。それを苦々しく思うケティだったが、彼女も宝石つきのロケットに心を動かされる。2人は立派なアーミッシュになれるか? (鮮烈度 ★★)[主役] [児童文学]
- ジェフリー・ディーヴァー『12番目のカード』(2005)【Amazon】
- リンカーン・ライムシリーズ6作目。負傷して入院した新米刑事を、彼の双子の兄が看病している。(鮮烈度 ★★) [ミステリ]
- ロディ・ドイル『スナッパー』(1990)【Amazon】
- 『おれたち、コミットメンツ』の続編。ラビット家には大勢の子供がいて、そのなかに双子の姉妹(リンダ&トレイシー)もいる。続編の『ヴァン』に比べると、この頃はまだ可愛い。(鮮烈度 ★★)
- ロディ・ドイル『ヴァン』(1991)【Amazon】
- 『スナッパー』の続編。失業者の中年2人が、ヴァンを購入して屋台形式のチッパーズの準備を進める。失業者の子供が双子の姉妹(リンダ&トレイシー)。男友だちをけしかけて親父のヴァンをぼっこぼこに叩かせる。(鮮烈度 ★★)
- ミシェル・トゥルニエ『魔王』(1970)【Amazon】
- ナチスの元で少年狩りをしている大男が双子の男の子と出会う。「肉体が霊魂に掟をあらかじめ教え、霊魂を気まぐれで隷従させるような深いところに生命力を秘めているように思えるあの双生出生というものに、彼はそれまでずっと魅せられてきた。それは自然の気まぐれだ。自分を別な自己にすることによって、一方の存在にもう一方の存在の内面のあらゆる秘密を有無を言わさずにゆだねる自然の気まぐれだ。」 双子の魅力を簡潔に示した名文と言えよう。(鮮烈度 ★★)
- ウィリアム・トレヴァー「トリッジ」【Amazon】
- 双子の姉妹が登場する。(鮮烈度 ★★)
- 原りょう『そして夜は甦る』(1988)【Amazon】
- 双子の中年弁護士が登場。兄は刑事弁護士、弟は経理弁護士。顔かたちは瓜二つだが、服装や装飾品が異様に違っていて、それが逆にインパクトになっている。(鮮烈度 ★★) [ミステリ]
- J・G・バラード『楽園への疾走』(1994)【Amazon】
- 双子の姉妹がくすくす笑いをして夫人を怒らせている。(鮮烈度 ★★)
- ハロルド・ピンター「ティー・パーティ」【Amazon】
- 会社社長の息子が双子。くすくす笑いとひそひそ話を披露する。(鮮烈度 ★★)
- トマス・ピンチョン『ヴァインランド』(1990)【Amazon】
- 自動車改造工場のオーナー(リック&チック)。「七〇年代のオイルショック期に、キリスト様への信仰とビジネス資金を同時に見いだしたという二人である」 (鮮烈度 ★★)
- ジョン・ファウルズ『魔術師』(1965)【Amazon】
- リリー&ローズ。ギリシャの島で主人公が出会う。姉と恋に落ちるも、彼女たちには秘密があった。(鮮烈度 ★★)
- アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』(1980)【Amazon】
- セレブ集団「蜜蜂レディ」のメンバーに双子の姉妹(ウジェダイ&アジェダイ)。ロシア語で「だれでしょう」と「どれでしょう」の意味。漆黒の髪に真っ白い肌をしている。(鮮烈度 ★★)
- シャルル・ペロー「親指小僧」【Amazon】
- 7人いる息子のなかに双子が3組いる(しかも年子)。ペロー自身も双子で、幼いときに片方を亡くしたとか。(鮮烈度 ★★)
- エドガー・アラン・ポー「アッシャー家の崩壊」(1839)【Amazon】
- アッシャー家の当主ロデリックには双子の妹がいた。彼女の死体は部屋に安置されていたが……。(鮮烈度 ★★)
- アリステア・マクラウド「完璧なる調和」(1984)【Amazon】
- 未亡人となった女が、元夫の双子の兄に言い寄る。(鮮烈度 ★★)
- 三田誠広『地に火を放つ者』(1992)【Amazon】
- ナザレのイエスと使徒のトマスが双子。超能力者のイエスは、未来を幻視したり水を葡萄酒に変えたりするほか、ドラえもんと同じくわずかに宙に浮いていたりする。それを眺めるトマスだったが、実は彼にも同様の能力があった。(鮮烈度 ★★)[主役]
- デイヴィッド・ミッチェル『ナンバー9ドリーム』(2001)【Amazon】
- 屋久島出身の三宅詠爾には、かつて二卵性双生児の姉がいた。少年時代、その姉が予言めいたセリフを口にし……。(鮮烈度 ★★)[主役]
- 宮沢賢治『双子の星』(1918)【Amazon】
- 双子のお星様が主人公。(鮮烈度 ★★)[主役] [児童文学]
- ヘルタ・ミュラー『狙われたキツネ』(1992)【Amazon】
- 双子の男子小学生。「二人は双子で、誰ひとりとして見分けることができない。彼らはひとりの男の子の二乗なのだ。」(p.84) (鮮烈度 ★★)
- ハリー・ムリシュ『過程』(1998)【Amazon】
- 一卵性三つ子の兄弟(アルベルト&マーニックス&シュールト)。3人はそれぞれ本に関わる仕事をしていた。外見がみな似ているため、見分けやすいよう襟の折り返しにイニシャルの形をしたバッジをつけている。「ぼくたちを見るその目……」マーニックスが言った。「よくそういう目を見るよ」(p.240) 三つ子が生まれる確率は1/7000とか。(鮮烈度 ★★)
- 莫言『豊乳肥臀』(1995)【Amazon】
- 語り手が二卵性双生児。ほか、2組の双子が登場する。(鮮烈度 ★★)[主役]
- ルーシー・モンゴメリ『アンの青春』(1909)【Amazon】
- 『赤毛のアン』の続編。マリラ(アンの育ての親)が双子の孤児を引き取る。やんちゃだけど意外とまっとう。たぶん、双子の実像に近いのだろうが、双子小説的にはあまりおいしくない。(鮮烈度 ★★)
- 山田詠美『PAY DAY!!!』(2003)【Amazon】
- 16歳の双子の兄妹(ハーモニー&ロビン)が主人公。父はアフリカ系、母はイタリア系。両親の離婚によって兄妹も別居することになり、兄はサウス・キャロライナ、妹はニューヨークに住んでいる。夏休みを利用して妹が兄のもとに滞在するも、その間、母が9.11の犠牲になる。(鮮烈度 ★★)[主役]
- 吉行理恵「迷路の双子」(1982)【Amazon】
- 薄幸の16歳こずえは、1年前に双子の姉チエを亡くしていた。こずえの家は父親が蒸発し、母親がノイローゼ、父方の親戚には疎まれている。病弱で顔に痣があるこずえは、人形に逃避するしかなかった。(鮮烈度 ★★)[主役]
- アルンダティ・ロイ『小さきものたちの神』(1997)【Amazon】
- 二卵性双生児の兄妹(エスタ&ラヘル)が主人公。「シャム双生児のまれな例であるかのように、体は別だが心は一つ」。キャラ設定は意外と普通。(鮮烈度 ★★)[主役]
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